スケートカルチャーとともに育ち、やがて「本物」と呼ばれるようになった名品
〈VANS / ヴァンズ〉の原点であり、今なおブランドを象徴する一足。
1966年、長年シューズメーカーで経験を積んだポール・ヴァン・ドーレンは弟のジェームズ、友人のゴードン・リー、セルジュ・デリアとともに「ヴァン・ドーレン ラバーカンパニー」を設立。カリフォルニア州アナハイムにショップをオープンする。
オープン当初、店内のディスプレイが間に合わず、来店した客にサイズやカラーを選んでもらいその場で受注生産する「カスタムメイド」という形で販売をスタート。その際、ベースのモデルとなっていたのが「#44」、のちに「Authentic」と呼ばれることになるデッキシューズだった。オープン初日には12名の客が訪れ、その日の夕方には出来立てのシューズを受け取ったと言われている。
当時のスケートボードはまだ黎明期で、サーファーが波待ちの合間に楽しむ遊びに過ぎなかった。「#44」はサーファーに向けたデッキシューズだったのだが、VANS特有のワッフルソールは他のスニーカーに比べグリップ力が高く、次第にスケートボードを楽しむサーファーの間で広まっていくこととなる。
1970年代に入ると、スケートボードはカルチャーとして確立され、「#44」もスケーターにとって欠かせない存在に。片足ばかりがすり減ってしまうスケーターのために、VANSでは片足のみの販売にも対応。それは一足から生産できるVANSの強みでもあり、スケーターたちから高い支持を得る所以にもなったのである。
そして1970年代半ば、カリフォルニアに伝説的なスケートクルー「Z-BOYS」が登場。
今までとは全く違うライディングスタイルを生み出し、街中に限らずバックヤードプールなどで滑る彼らが愛用していた「#44」はやがて"本物"を意味する「Authentic」と呼ばれるように。
「Authentic」以降も、Z-BOYSのメンバーのアイデアを取り入れた「Era」、シューレースを排した「Slip-On」、サイドのジャズストライプが特徴の「Old Skool」など数々の名品を世に送り出していったVANS。やがてスケーターのみならずBMXライダーやミュージシャン、アーティストたちにも愛され、ファッションシーンにおいてもその地位を確立していったのである。
究極にミニマルなデザイン、高いグリップ力を誇るワッフルソール、そして創業当時から変わらないバルカナイズ製法を用いた高い品質。ブランドを創業時から支えるこの「Authentic」はVANSの原点であり、スニーカーの永久定番として語り継がれるべき名品なのだ。